内実コンブリオ



は…?

あ、いやいや!思わず、言葉遣いが。

この人は何を言い出すのか。

まさか新たな仕事を渡されるのかと、びっくりして一瞬動けなくなった。



「あ、特には何もありません」



もう、自分ってば、馬鹿正直。



「ほんまに?やった!じゃあさ、どっか、食べに行こ!!」

「え…」





こらまたすごい所へ来てしまったもんだ。

…なんでやたら高いんだろう。

こんな予定、考えていなかったから、今日は野口さん一人しか連れてきてない。

いわゆる所持金1000円だ。

それにしても、なんだろう。このメニューは。

ざっと目を通せば、一品3000円を軽く越えていた。

頼み方がわからなかったので、この店の行きつけだという先輩に全てまかせてしまった。

自分は何故に会社帰りに本格的な和食を食べに来ている?



「どうした?食べやんの?」

「いえ…はい!!」

「緊張し過ぎやで。リラックス、リラックス。俺なんかに緊張なんかせんでええやん!」

「う…すいません」

「謝らんでええ」



なんて優しい人。

でも、惑わされない。

満面の笑みだけど、きっと内心は自分の性格にめんどくさがってるのかもしれない。

それに、わかっている。

こんな高いもの自分なんかが食べて、野口さん一人しか連れてきていないとわかれば、きっと後々、請求してまでも払わされるのは目に見えている。

ここはしっかり断ってやろう!


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