The Slave
2.
語学力のないももにもできる仕事、それはハウスキーパーだ。
個人のお宅に伺い、掃除をする。
依頼者は男性だけではない。
フルタイムで働くのが当たり前なこの国の女性は、仕事も子育ても家事掃除も、何もかも抱えると自分が壊れてしまう、それを知っているので気軽にハウスキーパーを雇い、掃除を依頼する。

ももが土曜日に伺って掃除をするお宅のオーナーは、インド系シンガポール人の弁護士だ。
そこの家でベッドメイク、風呂掃除、モップがけ、台所掃除をする。4時間働いて日本円で換算すると一万円をもらっている。

弁護士の名はザック。ベッドルームが5つもある豪邸に住んでいる。バツイチで彼女なしの彼は、自分で一部屋を使用、3部屋をハウスメイトに貸し、残りの一部屋は友人を泊めたりAirbnb用に不定期に貸したりしている。

しかし、几帳面なザックは、ハウスメイトの部屋を定期的にチェック、少しでも汚いと速攻で彼らを追い出すというのが常で、もはや趣味の域だった。

彼はお金に困っていないので、ハウスメイトからの家賃収入を当てにする必要もなく、自分の好きなようにハウスメイトを入れたり追い出したりできる。
ももには羨ましい限りだった。

ザックの所で働くのは朝10時から昼2時まで。
それを朝8時から昼12時までに変えてもらう事にした。

そして、午後からの新しい得意先を探さなくては。
ももは、某クラシファイド・サイトに
「几帳面な日本人女性が週末午後のハウスキーピングの仕事を探しています」
と広告を出した。

翌日、メールが来た。
「あなたの広告を見ました。こちらは2ベッドルームの一軒家に住む男性です。週末のハウスキーパーを探していたのでご都合が良ければ来ませんか」

ももは喜んだ。
そして早速、その家に面接兼仕事に行く事にした。
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