放課後の図書館は君に嫌われる
「音、うるさいんだけど」
突然隣から声がして、私は肩をビクリと揺らした。
不機嫌そうな、六宮くんだ。
「ご、ごめん」
「うん、別にいいけど。館内ってマナーモードだから」
視線は本に落としたまま、
六宮くんは抑揚のない声でそう言った。
私は、ごめん、と小さく呟く。
同じ図書委員の六宮くんはいつも1人。
誰かと仲良さげに話している所は見たことがない。
六宮くんはいつも窓際の席で本を読んでいるか、窓の外を眺めているか、机に突っ伏して寝ているかだ。
いつも、つまんなそうにしてる。
女子は「ちょっとカッコイイよね」とか「雰囲気あるよね」とか言ってるけど、
誰も、六宮くんに話しかけようとしない。
それは男子も一緒。
だから当然私も図書委員にならなかったら、
六宮くんと話すことはなかったんだろう。
でも、
必要最低限しか話さない六宮くんとやる当番は、正直退屈だ。
「それって、何の意味があんの?」
「えっ?」
突然話しかけてきた六宮くんに驚いて、
私は六宮くんの顔を見る。
六宮くんは、じっと私の顔を見ていた。
「え、な、何」
「いやそれ。けーたい、SNSの」
「ツ◯ッター?」
「そうそれ」
「な、何の意味って…?」
六宮くんから話しかけてくるなんて珍しすぎる。
貴重だ。
自分が少し緊張しているのが分かった。
動揺のせいでしどろもどろに聞く私に、
六宮くんは溜め息混じりに言った。
「だから、何のためにそれやってんの」
「何のためって……、皆とつながるため?」