まりあ様のおみちびき~秘密の妹は農家の天使⁉~

第8幕・電脳世界の畑へようこそ【訳・ついに兄妹はゲーム世界でスローライフを満喫するようです】

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第8幕・電脳世界の畑へようこそ【訳・ついに兄妹はゲーム世界でスローライフを満喫するようです】

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 我ら、電車降りし。
 しかし。
「迷ったー」
 兄云う。
「お金ももうないし…」
 商店街の辺りを彷徨《うろつ》く。
「腹の音《ね》、鳴りし」
「そうだな……」
「わんわん」
 犬も同意せし。
「あ」
 すると。
 商店街の人の波から、聞いた声現れん。
「黒森さん達!」
 伊藤堅固君だった。
「あ、堅固君……」
 失敗。【しまった】
 早速発見。【見つかったか】
「よかった。無事で」
 安堵する堅固君。
「悪いが、蔓紅村には絶対帰らない」
「わかってますよ。しかし、ここにいたら時間の問題です」
 堅固君は電話《スマホ》を取り出す。
「とりあえず、事情は父に話しました。是非お話しを」
 兄電話《スマホ》取りし。
『もしもし。はじめまして。株式会社パーフェクトワールドの伊藤剣先《いとう・けんざき》です』
 電話の声云いし。
『突然ですが、もし現実《こちら》に居場所がないのならば…異世界《あちら》はいかがでしょうか?』

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 我々ゲーム会社パーフェクトワールド来たり。
「ここのゲームに一時的に避難するといいと思います」
 堅固君云う。
「身体毎異世界《ゲーム》に行って、なにか支障はないのか?」
 兄は云う。
「身体毎、と言っても、仮想空間で再構築されて感覚を共有するだけですから、身体データはサーバー内で眠ってますよ」
 いまいちよくわからない説明であったが、まあ大体理解できた。
「異世界《ゲーム》では何をしても自由なんだな?」
「ええ。ただ一週間に一度は現実に戻らないと、身体がもたないので」
「おなかを空いたりしないのか?」
「身体に栄養源は補給されますが、何分長いこと眠っていると支障が……」
「ちょっと不安だなぁ」
 兄心配になり始める。
「大丈夫です。現地《ゲーム内》では僕がナビゲーターをしますから」
「はあ」
「やめるならそうしますが……」
 兄暫し考え。
「わかった。試作ゲームの被験者《テストプレイヤー》になろう」
「よかった!誰も怖がって被験者《テストプレイヤー》になってくれなかったんです!」
「へ?」
「さあさあ、善は急げです!」
 ふたり、兄妹、探偵に押され装置に組み込まれる。
「では、最新型VRMMORPG【グリーンピース】起動します」
 眼鏡に夜会巻きの女性が云う。
「…異世界《ゲーム》では何をしたいですか?」
 唐突に、伊藤堅固が云った。
 すると、兄は笑い
「畑をやりたいです」
「なぜ?
「野菜の味で人や動物だけでなく、機械とも仲良くなれる未来を作りたいからです」
「なるほど。それは善い考えですね」
 機械は筒状になっていた。入ると、水槽の中の人魚になったようだ。

 意識が遠退く。

「行ってらっしゃい」

 遠退いていく意識の中、伊藤堅固さんの笑顔が妙に印象深し。


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