まりあ様のおみちびき~秘密の妹は農家の天使⁉~

第7幕・天使暴露【訳・天使じゃないのがバレちゃった⁉】

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第7幕・天使暴露【訳・天使じゃないのがバレちゃった⁉】

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 我天使でないの暴露されし。
「な…」
「千尋の妹だと…?」
 驚く村人達。
 だが、その驚き方異端なり。【あれ、なんか変だな?】
「そんな…!」
 灰崎さんも驚きし。【あれ?天使派でも悪魔派でもない灰崎さんがなんで驚くんだ?ただの『妹』ならば、むしろ灰崎さんは安堵する筈……】

「お、俺には妹はいない‼いる筈はない‼」

 黒森さん全力で否定し。【なぜ?】
「いや、でも確かにさくらおばあちゃんが……」
「いや、いる」
 白霧神父云いし。
「私の父親が言っていた。【巫女】はふたりいると……」
 み、巫女?
 なんだか怪しい雰囲気になりし。
「そんな、じゃあまさか刹那さんはやはり「教祖」の御子を……‼」
 村人のひとり云いし。
「ああ、孕んでいたのだな……‼」
 村人歓喜せし。
 村人熱狂に包まれし。
「間違いない!あなたは悪魔ではない‼正真正銘の『天使』だ‼」
「マリア様のお導きだ‼」
「我々の希望だ‼」
 な、なになになに⁉
 逆に歓迎されすぎて怖いんですけど⁉
「わ、我天使にあらず」
「しかし、あなたは千歳の妹だと‼」
「「教祖」様の再来だ‼」
「これで教団も滅ぼされずにすむ‼」
「あ、あの、汝らクリスチャンにあらざりし?」
「いえ、私達はクリスチャンです。しかし、キリスト教会からは認められておりません」
 白霧神父…いや、信者云いし。
「我々は『マリアのおみちびき』という非公式のキリスト教団体です。主にこの村を聖地として、活動しております」

 な…?

 なんだと…?

「なるほど。祖母の『マリア様が畑に天使を呼ぶ』とはそういう意味か…?本物の天使じゃなかったんだ…!あの遺言と同じ天使だったのか…?」
 黒森さん云いし。
「謎なり【だから、何の話?】」
「私達「マリアのおみちびき」には、かつて「教祖」がおり、教祖には巫女《妻》がふたりいました。黒森花子さんの娘、姉の刹那さんと妹の永久《とわ》さんです」
 状況説明する白霧信者。
「しかし「教祖」様は以前所属していた団体でのテロ行為で国の警察に捕まりそうになりました。そして、御殿で自殺を…」
 村人達悲しそうな顔。
「そのさいに遺した言葉が「我の種子継ぎし者女子のみ。天使憑依せし者、新たなる巫女となりて教団立たん」だったのです」
 そ、そそそそ。
 そんな驚異な事情が。
「しかし、姉の刹那さんは自殺前から教祖様と不仲でして、その時にはすでに行方をくらましておりました」
「そ、その刹那さんから生まれたのが、花音さん」
 伊藤堅固君、あまりの事実に彼も驚嘆す。
「堅固、知らなかったのか?」
「いや、僕は「マリアのおみちびき」の信者じゃないし」
「そういえばそうだな……」
 黒森さん納得し。
「そして、永久さんから生まれたのが黒森千歳さん…」
「別に、種子だから千歳さんから生まれた孫の女子でも後継者足り得たわ」
 灰崎さん暗い顔。
「だけど、私《婚約者》も千歳さんもどうもお互いを異性としてみれなくて……」
「幼馴染はそんなものですからね。だが、妹がいたなら話は別だ」
 白霧信者云いし。
「えっと…灰崎さんが千歳の婚約者?」
「私の祖父は教団の副団長なのよ。で、だから私がいま村長として村を纏めてるわけ」
 灰崎さん溜息。
「まあ、神は信じてないけど、村は大事だからね」
「くうん」
「わんわん」
 つるとべに騒ぎし。
「え…」
 じゃあ、私は実の父親と血が繋がってなかったの?
 弟とも、半分しか?
 しかも、父親はテロリスト?
「あ、あ、あ、…」
 声、でなくなり。
「天使だー!」
「天使がやってきたぞー!」
 村人が喜ぶ。
 だが、それはどんな罵詈雑言より悪意に満ちている。
「あ…あ…」

「花音!」

 兄叫びし声聞こえる。
「あ…」
「い…いと高き「魔性」に供物を!」
 いつも言っていたその台詞。
「い…」
「花音!お前が天使なら…飛び立て!飛び立つんだ‼」
 兄混乱せし。
 手を差し出す。

 すると…。

 一陣の風吹きし。
「花音!俺と…飛び立とう!」
 その言葉、どういう意味なのか。
 わからなかった。
 しかし、私は立ち上がり。

「いと高き「魔性」に供物を!」

「へ?」
 村人驚きし。
「我、斯様な狭い箱庭《むら》に閉ざされし教祖にあらず!我、世界《よ》に羽ばたきし天使《鳥》なり!我、兄君とともにいざ世界《よ》に羽ばたかん!…全てはいと高き「魔性《お客様》」に供物《野菜》を備えんがため!」

 我、左手で天を指差し、右手で腕組むポーズ。

「いと高き「魔性」に供物を!」
「いと高き「魔性」に供物を!」

 兄、見様見真似で同じポーズ。

 我と兄、手を繋ぎし。

「よっしゃ」

 ちょうど、電車来し。

 走る。

 走る。走る。

 犬達も。

「こら!」

 追いかけし。

 追いかけし村人。

 我々電車に飛び乗る。

 足入れし村人蹴飛ばして。

「左様なら‼」

 我爽やかに云いし決意固め。

 兄も車窓から清清しい顔をせし。

「まてー‼」
「天使を返せ‼」

 白霧信者含む村人騒ぐ。

「あかんべー」

 兄嗤いし。

「きゃうんきゃうん」

 つるとべにいう。

 こうして。

 私達の旅は、始まったのでした。
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