気高き国王の過保護な愛執
ルビオはこともなげに肩をすくめる。平和な国とはいえ、各地の領主を治め、自己主張の激しい貴族の声を聞き、先々代の王の時代には血を流し合った戦敵である諸外国の動向を探りながら外交をするのは、並大抵の負荷ではないだろう。

こういう時間が、ルビオの安らぎのひとときなのかもしれない。

フレデリカは目の前の草むらに行こうとして、足首の痛みに起き上がることができなかった。ルビオが片手で彼女を押し戻す。


「ぼくがやるよ、なに?」

「そこに生えてる、ぎざぎざの葉をあるだけとってくれない?」

「マグワースだね」

「偉いじゃない、覚えてるのね」


マントが土に擦れるのもかまわず、膝をついて薬草をとり始める。相変わらず黒の上下に、腰には剣帯。フレデリカは観察した。人前に出ないのに身に着けているということは、あの長剣は装飾ではないのだ。


「これくらいでいい?」

「十分よ、ありがとう」


腕いっぱいにとってくれた薬草を、スカーフに包んだ。部屋に持ち帰ってすり潰し、膏薬にするつもりだ。半分は乾燥させて保存する。


「ぼくも手伝おうか。あの頃さんざんやったよね」

「いいわ、ヘタだから」

「そうでもなかったと思うけどな!」


憤慨するルビオに、フレデリカは笑った。すでに腫れてきた、フレデリカの投げ出した足首に、ルビオが目をやる。


「イレーネを気遣ってくれてありがとう」

「彼女はあなたに似てるわね」

「母親は違うんだけどね。イレーネとぼくは、とても仲がよかったと聞いている」

「今は…?」


すぐには答えはなかった。


「会わないようにしてる。仲がよかったならなおさら、そのほうが彼女にもいいと思って」

「ルビオ…」

「あの村に戻りたいな」
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