気高き国王の過保護な愛執
真っ白なリネン類が山のように積まれたかごを持った侍女がふたり、急ぎ足に歩いている。一枚落としたことには気づいていない。


「おい、そこのふたり」


構造上、大きな声を出さなくても響いた。

侍女たちが足を止め、こちらを見下ろした。とたん、ヒッと息をのんだ。

落としたぞ、と言うまでもなく、ルビオが持った布を見て、ひとりが血相を変えて階段を駆け下りてくる。


「申し訳ございません!」

「いや…」


あまりの勢いに、ルビオのほうがびっくりしてしまった。

差し出された手はぶるぶると震え、ルビオの手から布を取る寸前、びくりとためらった。ルビオのほうを見ないよう顔を伏せ、恐ろしい菌でも染み込んでいるかのように指先で布をつまみ、さっと膝を折ってから上階へ駆け戻る。

その様子を見て、誰にも会わなかった理由を悟った。

避けられていたからだ。




「王妃様の影響でしょう」


自分でも驚くほどの打撃を負い、公務室へ戻ると、クラウスがルビオの顔色にすぐ気がついた。


「母上の…?」

「あなたの耳には届いていなかったんですね、いいのか悪いのか」

「教えてくれ。なんだ」


サインを求める請願書を机の上に広げながら、クラウスはルビオの顔を覗き込んだ。打ち明けても大丈夫かどうか、確かめているみたいに。


「先王とギュンター様が、毒によって亡くなった可能性が高いと──ディーター!」


鵞ペンの先を削る手がすべったのだ。ナイフの刃先があたり、ルビオの指先から血が滴る。


「なにをしているんです」


クラウスが懐から手巾を出し、ルビオのけがをくるんだ。
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