気高き国王の過保護な愛執
「ありがとう」
「着替えるなら手伝うわ」
ルビオは首を振った。フレデリカはそっとルビオの肩に手を置いてから、部屋を出ていった。
ひとりになったのを確認し、震える息を長々と吐く。
『記憶が戻るのを、嫌がるみたいに』
どうしても開かない扉がある。ルビオ自身、それを感じる。
開かないのは、開けたくないからだ。そのこともわかっている。
目を閉じて、心の中で手繰り寄せる。肺が痛くなるほど冷えた夜の空気。凍てつく川の水。だが自分は、河岸に上がることはせず、水の中を逃げた。
なにから?
力の入らない手を、時間をかけて握りしめた。
まだ目をそらすつもりか。
思い出したくない。ということは自分は、知っているのだ。
なにから、ではない。
誰から?
その問いの答えを。
* * *
城の中を歩いていて、ふと気がついた。
今日は妙に、人に会わない。
辺境の領主との謁見を済ませ、いつものように大回りして、図書館に寄ってから公務室に戻ろうとしていたときだった。
おかしいな、と感じた。
城内が静まり返っているわけでもない。単に、誰とも顔を合わせないのだ。
ふと視界の端に、白いものが翻った。布だ。
ちょうど食事中に使うナプキンほどのサイズのそれが、ひらひらとルビオのいる回廊に落ちてきた。
拾い上げて、落とし主を探した。
円筒型の吹き抜けになっている二階の廊下に見つけた。
「着替えるなら手伝うわ」
ルビオは首を振った。フレデリカはそっとルビオの肩に手を置いてから、部屋を出ていった。
ひとりになったのを確認し、震える息を長々と吐く。
『記憶が戻るのを、嫌がるみたいに』
どうしても開かない扉がある。ルビオ自身、それを感じる。
開かないのは、開けたくないからだ。そのこともわかっている。
目を閉じて、心の中で手繰り寄せる。肺が痛くなるほど冷えた夜の空気。凍てつく川の水。だが自分は、河岸に上がることはせず、水の中を逃げた。
なにから?
力の入らない手を、時間をかけて握りしめた。
まだ目をそらすつもりか。
思い出したくない。ということは自分は、知っているのだ。
なにから、ではない。
誰から?
その問いの答えを。
* * *
城の中を歩いていて、ふと気がついた。
今日は妙に、人に会わない。
辺境の領主との謁見を済ませ、いつものように大回りして、図書館に寄ってから公務室に戻ろうとしていたときだった。
おかしいな、と感じた。
城内が静まり返っているわけでもない。単に、誰とも顔を合わせないのだ。
ふと視界の端に、白いものが翻った。布だ。
ちょうど食事中に使うナプキンほどのサイズのそれが、ひらひらとルビオのいる回廊に落ちてきた。
拾い上げて、落とし主を探した。
円筒型の吹き抜けになっている二階の廊下に見つけた。