気高き国王の過保護な愛執
「ルビオ」


抵抗はあったが、それは体重をかけてしまえば難なく押さえつけられてしまう程度のものだった。髪が乱れ、白い首筋が見える。

どくんと身体が脈打ち、衝動のまま噛みついた。フレデリカの香りがする、なめらかな肌。舌を這わせ、唇で食む。


「ルビオ!」


鋭い声に、はっとした。

フレデリカの瞳に涙が浮かんでいるのを見て、狼狽し、我に返る。

自分は今、なにをした?


「すまない、リッカ…」

「部屋に戻るわ、離して」


素直に離れたルビオを押しのけるようにして、フレデリカは長椅子から立ち上がった。

手で首筋を押さえている。その指先が震えている。

髪に隠れて、表情は見えない。


「リッカ、ごめん」

「おやすみなさい」

「リッカ!」


布の靴は、音もなく彼女を扉の向こうへ連れていった。

脳裏に焼きついているのは、怯えた目。

ルビオはふらつき、長椅子に身体を投げ出すように座った。後悔なんてものじゃない。自分が自分であることを拒絶するほどの嫌悪感。

フレデリカの瞳は、恐怖に震え、裏切られたことに傷ついていた。

引き絞られるように心臓が痛み、両手で顔を覆った。

なんてことを。




浴場へ続く小部屋では、侍女がうたたねをしていた。

人が入ってきた気配に気づくと、はっと姿勢を正し、それが誰だかわかったとたん、椅子から転げ落ちそうなほど怯えて青ざめた。


「へ、陛下、失礼いたしました」

「おれにかまうな。寝ていてくれていい」

「どうか、お許しを…!」
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