あべこべの世界
 そのとき背中を叩かれて驚いて振りかえる。

「おはよう。敏子」

 直美が立っていた。

 メイクもヘアースタイルも完璧ないつもの直美だった。

 わたしのように朝の通勤だけで崩れてしまったりしない。

 直美の視線がわたしの口元で止まっているのに気づいた。 

「敏子のその口紅の色すてき」

 直美がわたしのメイクを褒めるなんて、いやわたしのことを褒めるなんて、記憶にある限り一度もなかったことで動揺した。

 わたしの動揺など全く気づかないように直美は鏡の中の自分を見つめ、少し首を傾け甘えるような声で言った。

「あーあ、わたしも敏子みたいに美人だったらなー」




 やっぱり今日は変だ!大変だ!



< 22 / 49 >

この作品をシェア

pagetop