あべこべの世界
 輪郭のはっきりしない口元は口紅のせいでそれが強調され、ホウレイ線も今日は一段と深い。

 ブルドック顔にまた一歩近づいた感じだ。

 少しでも下を向くとできる二重あごもいつもと同じだった。

 体はくびれのないウエストと座布団のようなヒップ、曲線とはほど遠い四角いシルエット。

 いつものように不細工だった。

 なにか違うといえば、昨日よりもまた少し醜くくなっていることかも知れない。



 なにも変わりはない。


 いつもとなに一つ変らない。


 わたしは意味もなく手を洗った。

 勘違いだったのだ。

 水道の蛇口を閉める。

 わたしではなく、わたしの後ろか近くにいた誰か他の人をみんなは見ていたのだ。

 ハンドドライヤーで手を乾かしながら自分自身に言い聞かせた。



 そうだ。

 そうに違いない。
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