あべこべの世界
 最初は待ち合わせ時間を四十分ほど過ぎた頃に一度。

 敏ちゃん、今日残業になっちゃったのかな?

 次は一時間半後。

 とりあえずぼく、今日は帰るね。

 最後は夜の十一時過ぎ。

 敏ちゃん、ぼく何か敏ちゃんを怒らせるようなことしちゃったかな?



 ごめん!孝志。


 すっかり孝志との約束のことを忘れていた。

 スマホを投げ出しわたしは深呼吸をしベッドの上に正座した。


 昨日から起きていることを整理してみる。

 なんだか全ての認識があべこべになってしまったようだ。

 わたしが美人だとかタバコが肌にいいとか。

 三回目の深呼吸で目を閉じる。

 健二の視線を思い出す。

 健二がわたしを食事に誘うなんて。

 突然笑いが込み上げてきた。
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