あべこべの世界
「ど、どうしたの!敏ちゃん!」

 次から次へと生あたたかい涙がわたしの?を滑り落ちていく。

 孝志は驚いて食べる手を止めわたしのそばへやってきた。

 急にやってくる感情は同じように急に去って行ってしまう。

 孝志の肉厚な肩でひとしきり泣くと、なんだかとてもすっきりして、深いため息をついた。

 泣くとお腹が空き食べかけのカツ丼に再び取りかかる。

 カツもご飯ももう冷たくなっていた。

 孝志は何も言わず、また自分もカツ丼を食べ始めた。

 孝志はわたしが泣いた理由を聞かなかった。

 ただときどき食べる手を止めて心配そうにわたしの様子を伺った。
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