あべこべの世界
 朝子さんとは最初はあいさつだけの仲だったのが、いつからか長々と世間話をするようになり、ここ一年くらいはお互いの部屋を行き来するほどになっていた。

 サバサバとした男まさりな性格な朝子さんだったがお洒落な人で、彼女らしい透明感のあるスタイルだった。

「このカラー敏ちゃんかわいいよ」

 白っぽいピンクの口紅は自分には似合わないとくれた朝子さん。

 口紅をもらったことより人からかわいいと言われたことがとても嬉しかった。

「今度また朝子さんをよんで鍋パーティでもしようか」

 いつも最後まで残すおでんのたまごを器用に箸で半分に切りながら孝志は言う。

「そうだね。今度会ったとき誘っとく」

 わたしは二個目の大根に取りかかった。

 
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