ひとはだの効能
「多少は融通を利かせることもできますから、こちらの方もまたご相談ください」

 そう頼もしい言葉を残して、菅井さんが席から立ち上がる。

「……ありがとうございます」

 きりっとした長身のスーツ姿に、男の俺でさえ見惚(みと)れてしまう。

 ……自分なりに、経営計画もきちんと立てているつもりだった。

 決して行き当たりばったりではない。もちろんここで終わるつもりもなく、次の展開も考えて経営しているつもりだった。

 しかし、二人との面談で俺は自分の甘さをことごとく思い知らされた。

「菅井さん、これ。コロンビア・アンジェリカです」
「ありがとうございます。お代は……」
「いいんです、僕からのお土産です」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
「わあ、ありがとう遊馬くん!」

 ……こんなんで、香澄さんのそばにいたいだなんて、ホント俺って笑わせる。

 揃ってコーヒー豆を受け取る二人を見ながら、俺は言いようのない敗北感に打ちのめされていた。

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