亡国の王女と覇王の寵愛

辿り着いた答え

 カーテンを閉ざしたままの薄暗い室内。
 寝台に横たわったまま、レスティアは何度も繰り返し、ディアロスとの会話を思い出していた。
 真実はすぐ目の前にあったはずだった。
 噂などには惑わされず、ジグリットを信じると決めた。
 それなのにディアロスのひと言で、こんなにも心が揺れている。今となっては、誰が本当のことを言っているのかわからなくなってしまっていた。
 ジグリットを信じていた。
 彼と一緒に生きていくと決めていた。
 幼い頃から知っている兄のようなディアロスが、自分を騙すとも思えなくて。
 レスティアにとってはどちらも大切なふたり。
 だが片方は、確実に嘘を言っている。
 真実は再び闇の中へ。すべてはまた、振り出しに戻ってしまった。
(ううん、振り出しどころか……)
 あの時はそれしか方法がないと、思い詰めていた。だがもしディアロスが嘘を言っていたのだとしたら、自分の意志で捕虜だった彼を見逃したのだ。真夜中に人目を忍んで逢いに行くよりもずっと、大きな間違いを犯してしまった。
 そしてディアロスが正しいのだとしたら。
 両親の仇であり、祖国を滅ぼした国の正妃となる。ディアロスのようにグスリール王国から逃げ延びた者にとって、レスティアはもう王族の生き残りではなく、ただの裏切り者だ。
 どちらが正しかったとしても、取り戻せない過失があり、それがレスティアの心を苛んでいく。
 身体がひどくだるかった。
 微熱が続き、食事もできない状態が続く。心配したメルティーがずっと付き添っていてくれるが、会話を交わすのさえ億劫になってしまっていた。
 レスティアがそんな状態だと聞き、心配したのだろう。
 予定よりも一日早く、ジグリットが帰還した。
 彼は帰還すると何よりも先にレスティアのもとを訪れ、寝台に力なく横たわっている姿を見て眉をひそめた。
「ジグリット?」
「……無事でよかった」
 その言葉は、もしレスティアがディアロスと遭遇していたら彼に傷つけられるかもしれないと危惧していたからか。
 そっと頬を撫でる指。
 いつもは冷たいその指が、今日はとても温かく感じる。
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