居酒屋探偵

暇になった俺は、暗くなった窓を鏡代わりにして顎鬚を整えた。

灰皿に置いた煙草の紫煙が、細くゆらゆらと薄暗い店内に昇っていく。


―――ここは居酒屋『ぽっぴん』。

とある田舎の駅近くにある、小さい居酒屋だ。

居酒屋にしては小洒落ている、どことなく喫茶店っぽい綺麗な店だが、田舎すぎて客があまりいない。

現に今の客は、カウンター席に座る俺一人だけだ。

結構週一くらいのペースで来店してる常連客だが、俺以外に客がいた事はほとんど無い。

「おっ待たせしましたー!こちら、お先に生です」

ニコニコした営業スマイルで、さっきの女の子がコースターの上にドンと生ビールを置いた。

キンキンに冷えた中ジョッキに流れる泡が、CMみたいで美味しそうだ。

「それじゃ、ごゆっくりどうぞ!」

それにしても、少し前まで店長と厨房のおっちゃんの二人での経営だったのに、いつの間にかバイトらしき女の子が増えてる。

客が少ないのにバイトを雇う……給料とか大丈夫なんだろうか?

少し心配になる。

「あの、お客様」

彼女は俺の顔をのぞきこんだ。

首の後ろの細い一本の三つ編みが揺れる。
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