居酒屋探偵
一夜目:酒豪探偵と居酒屋バイト生



メニューを広げると、カラフルな書体で『春メニュー追加!出会いの季節に新しいおつまみはいかが?』と書かれてる。

こういうのを見ると逆に頼みたくなくなるのが、天邪鬼な俺の性格だ。

やたらと保険や高い商品をゴリ押ししてくるセールスレディかよ。

挑戦して不味かったら、責任取ってくれんのかって話。

まぁ良いや。


ピポーン♪


カウンター席の隅っこに置かれたスイッチを押し、店員を呼ぶ。

すぐに厨房の方から作務衣姿の若い女の子がパタパタと来た。

「失礼致しまーす、お呼びでしょうか?」

「焼鳥盛り合わせ、二つ。それぞれタレと塩で。あと生一つ」

少し悩んでから、俺は結局いつもの料理を注文した。

「はい、かしこまりましたっ」

彼女はパチンとハンディ(注文とる時にピッピッとやるアレ)を閉じると、厨房のおっちゃんに向かって声をかけた。

「三番、追加料理入ります!焼鳥のタレと塩!ドリンクは私やっちゃいますね!」

「はいよ!」

ふう。

あとは料理が来るのを待つだけか。
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