イジワルなくちびるから~…甘い嘘。【完】

耳を擽る甘い声と熱い吐息。大好きな零士先生と再び肌を合わせることができた悦びに幸せを感じていると、突然上半身を起こした彼が私の腕を引っ張った。


そして素早く背中に腕をまわし、軽々と私の体を持ち上げて連れられたのはベッドルーム。ふたりしてベッドに横になり、再び抱き合うと激しいキスの嵐が私を襲う。


まだ経験の浅い私だけど、抑えていた想いが全身から溢れ出し、夢中で零士先生の愛撫に応えていた。


愛し、愛され、求め、求められ――……高揚した私達の心と体は溶けるように混ざり合い、熱い契りを交わす。




まだ意識が朦朧とする中、息も絶え絶えに「零士……先生」と呼ぶと顔を上げた彼が不満気に唇を尖らせる。


「いい加減、先生と呼ぶのは卒業しないか? 俺達はもう先生と生徒じゃない。恋人同士だろ?」


その言葉がやっと落ち着きかけた心臓を再び高鳴らせる。


「零士って呼んでみろ」って命令され、囁くような小さな声で「……零士、さん」と呼べば、"さん"も要らないと耳たぶを甘噛みされた。


「ひいっ……」

「ひいっじゃない。零士だ」

「れ、零士……」


合格だとばかりに微笑んだ彼が、私の額に張り付いた前髪をかき上げ、軽くキスすると妙なことを言う。


「パリでは"さん"なんて付けて呼ばないからな」


零士先生ったら、私のこと相当なおバカさんだと思ってるな。そりゃ~賢くはないけど、そのくらいのこと私だって分かってるよ。

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