イジワルなくちびるから~…甘い嘘。【完】
零士先生ってこんな恥ずかしいことを躊躇することなく言える人だったんだ……
彼の意外な一面を知ったのと同時に、私はこんなにも零士先生に愛されていたんだと実感させられる。
「でも、零士が先に死ぬとは限らないでしょ? 私が先に死んだらどうするの?」
「んっ? そうだな……その時は、俺も一緒に棺桶に入るか……」
「げっ! それはやめて!」
大きく手を振ったせいで体に巻き付けていたシーツがハラリと絨毯の上に舞い落ちた。
「あっ……」
絵画と同じ一糸纏わぬ姿になり、恥ずかしくて胸の前で腕を交差させると零士先生が強引にその腕を解いて私の顎を持ち上げる。そして唇が触れる直前、何やら怪しい含み笑いを浮かべた。
「……冗談だよ」
「えっ?」
「生きたまま棺桶に入れられて焼かれるのはごめんだ」
零士先生は私をからかって面白がっていたんだ。
もぉ~こんな場面で冗談を言うなんて許せない!
怒鳴ってやろうとしたのに、絶妙なタイミングで彼に唇を塞がれる。が、その唇はすぐに離れ、熱っぽい瞳が私を見下ろした。
「だがな、たとえ冗談でも、俺にそこまで言わせた希穂の罪は大きい。俺を虜にした罰は受けてもらうからな。覚悟しろ」
「えっ……私が罰を受けるの?」
「あぁ、明日の朝まで、一晩中……な」