可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
一件落着
以前から、今日は飲み会というのは決まっていた
とりあえず一段落つくからと
全てがこんなにうまく行くとは思ってなかったのは私だけじゃなかっただろう
だから、皆の弾けっぷりは凄かった

私はそんな中、端っこで遠巻きに飲んでいたら、神崎係長がお疲れと言って隣の席に座った


「進藤係長、ある意味主役なのにこんな所で飲んでていいの?」
「いいんですよ。あのテンションにはついていけませんから」
「確かに皆凄いよな。相川も可哀想に、あれは暫く解放されそうにないな」


そう言って、神崎係長の視線の先を見ると、揉みくちゃにされている相川くんがいた


「本当ですね。可哀想に」


ふふっと笑って、神崎係長にビールを注ぎながら言った


「I企画の兵藤さんが、神崎係長のこと凄いって言ってましたよ。お陰で好条件で契約出来たって喜んでました」
「本当?それは良かった」
「前から聞きたかっんですけど……」
「何?」
「神崎係長は相川くんの事、どう思ってるんですか?」


神崎係長は驚いて目を丸くしていたので、私は慌てて違うんですと言った


「変な意味じゃなくてですね、神崎係長も仕事出来るのに、何で皆川部長は神崎係長じゃなく、相川くんを秘書にしたんだろうって。それを、神崎係長は何も思わなかったのかなって」


私が必死に弁明していると、神崎係長は吹き出した


「そんなに必死にならなくても大丈夫だよ。そう言えば、麻生にもいつか同じようなこと聞かれたな」
「すみません」


ま、どうぞと空いたグラスにワインを注いでくれた


「俺がフランス支社から本社に戻った時にはもう、皆川部長は相川をこき使ってたよ」
「え?」
「つまり、皆川部長が本社に帰って来たとき、相川は居たけど、俺は居なかった。それだけの違いだよ」
「それだけの違い……」
「確かにタイミングが悪かった事に多少やさぐれた時もあったよ。でもその時皆川部長に言われたんだ。『僕と神崎は2つしか年が違わないだろ?たった2才年上の上司からこき使われて、お前は楽しいか?』ってね」


余りにも的を得た言葉だったので、思わず吹き出した
それを見て神崎係長も笑う


「俺もそう言われた時は笑ったよ。だから逆に、この人に着いて行こうと思ったんだ」
「そうだったんですね」
「そうだったんですよ」


言い方が可笑しかったので、笑っていると、神崎係長が笑いながら、そう言えばと言った


「進藤係長は結婚はまだしないの?ってこれもセクハラか」
「話飛びますね。どうしたんですか?突然。あっ、セクハラだとは思ってないです」
「ありがとう。いや、俺さあ、結婚するんだよね」
「そうなんですね……って、神崎係長!結婚するんですか!?」


思わず、大声を出してしまった
当たり前に皆の注目を浴びてしまったが、神崎係長は何食わぬ顔でビールをグイっと飲んでいる


「うん。再来月に。まだ部長にしか言ってないけど」


そしてにっこり笑う神崎係長はとても幸せそうだった

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