可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
彼と過ごす週末
相川くんの家は、あの居酒屋からはそんなに遠くないからと、手を繋いで歩いていた

途中、コンビニに寄ってちょっと買い物をして、また歩いていると、相川くんがこんな事を言った


「明日か明後日、買い物行きましょうか。どうせこれから、俺の家に泊まる事多いだろうし、奈南美さんの使うもの、揃えておきましょう」


えっ?と見上げると、爽やかな笑顔が見下ろしていた


「奈南美さんの家より、俺の家の方が会社からも近いし、きっと便利ですよ?宿代わりに使ってもらっても、全然大丈夫です」
「でも」
「でもじゃないです。あ、着きました。ここです」


確かに私の家より近いけど……
と思いながら、相川くんに手を引かれるまま、部屋にたどり着いた


「どうぞ、上がってください」
「お邪魔します」


リビングに入ると、余計な家具は置いてない、シンプルな部屋だった


「綺麗に片付いてる」
「仕事が忙しくて、散らかす暇がないんですよ。適当に座ってて下さいね。俺、着替えてきますんで」


リビングに1人で立ってるのもなあと、ソファーに座って、テーブルの上にあった雑誌を手に取った


「英語の経済誌。ちゃんと勉強してるんだな、相川くん」


そういう人だから、皆川部長が秘書として離さないんだろうと思う


「奈南美さん、シャワー浴びてきます?」
「へっ?」

驚いて振り向くと、ラフな格好をした相川くんが、何か持って立っていた

「そんなに驚かなくても。スーツ着たまんまじゃ、寛げなくないですか?これ、俺のパジャマで悪いんですけど。あっ、ちゃんと洗ってるやつなんで、大丈夫です」


私は会社帰りなので、パンツスーツ姿だ
このままじゃ、寛げないのは確かだな


「じゃ、お言葉に甘えようかな?」
「どうぞ、タオルとか自由に使ってもらっていいんで、ドライヤーもありますから」


はいとパジャマを渡されて、頭をポンポンとされて


「行ってらっしゃい」


と送り出された
なんとなく女の扱いになれてるような気がすると思いつつ、シャワーを浴びることにした
シャワーを浴びて、相川くんのパジャマに袖を通すと、当たり前だけどブカブカだった
ズボンの裾はかなり捲り上げないとだし、袖だって指先がやっと出るくらい
肩幅も全然あってない


やっぱり男の人だ、相川くん


今更何を考えてるんだか
顔が熱いのはシャワーを浴びたばかりだからと、言い聞かせて、髪の毛を乾かした


「あ、コンタクト取っちゃおうかな」


使い捨てコンタクトを外し、いつも持ち歩いている眼鏡を取り出してかけた
そしてリビングに向かうと、何やら美味しい匂いがしてきた


「相川くん、シャワーお先しました」
「奈南美さん、ちょっと飲み直しません?簡単なつまみも作ったので」
「相川くんが作ったの!?美味しそう」


テーブルの上には、ちょっとしたおつまみと、ワインが並んでいた


「相川くん、料理も出来るんだ……って、どうしたの?」


急に黙ったと思ったら、じっと見つめられていた


「いや、奈南美さんが髪の毛下ろしてるの初めてだなぁと。結構長いんですね。肩甲骨のあたりまである」
「仕事中は邪魔だから、まとめて上げてるのよ」
「それに、眼鏡?」
「うん。いつもはコンタクトなの。眼鏡はいつも持ち歩いてるから外しちゃった」
「それに、俺のパジャマ……」
「やっぱり、私には大きいみたい」


苦笑してると、腕を引かれて抱き締められた


「あ、相川くん?」


身を捩ろうとしたけど、離そうとしてくれない


「どうしたの?」
「奈南美さん。可愛い」
「へっ?」
「俺の家に泊まる時は、俺のパジャマ着て下さいね」
「は?」


意味が分からないと思っていると、額にキスされた
ひぃっと身を引こうとするも、力じゃ適わない


「さ、飲み直しましょ?」
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