可愛げのない彼女と爽やかな彼氏
最終章
「かんぱ〜い」
「乾杯」

私と健次は今、ホテルのスウィートルームにいる
無事に結婚式を終えて、明日から新婚旅行に出発するので、せっかくだからとホテルに泊まることにした
午前中に婚姻届を提出し、私は『進藤奈南美』から『相川奈南美』になった


「ご機嫌だね?奥さん」
「あら、不機嫌の方がいいのかしら?旦那様?」


私達はバスローブ姿でルームサービスを頼み、シャンパンを飲んでいる
これで不機嫌になる方がどうかしてる


「結婚式楽しかったね」
「お義母さんはずっと泣きっぱなしだったよ?」
「本当に!あんなに泣かなくてもいいのにねえ」
「それに引き換え、娘は全然泣かないし」
「だって、楽しかったんだもん」


口を尖らせて横を向くと、健次はははっと笑って私が持ってるシャンパングラスを取り上げた


「あっ、もう何するの?まだ飲んでるのに」


取られたグラスを取り返そうと手を伸ばすと、ヒョイっとかわされて健次がグイッと口に含んだと思ったら、私の唇を塞いだ
シャンパンが健次の口から私の口へと流れてくる
でも全部飲み込めずに唇から溢れて顎へと流れていく


「もうっ、健次……」
「こんなに零して……」


顎から首へとシャンパンを舐めとっていく
そしてそのままベッドへと体を倒された


「健次っ」
「1週間も離れてたんだ、もう限界」
「でも、私、シャンパン飲みたい……」
「分かったよ」


健次はまたシャンパンを口に含み、唇を塞いだ
さっきほど量は多くなかったのか、今度は全部飲みほせた
でも一気に飲んだので酔いがまわって、しばらく動けずにいると、健次が私のバスローブを剥ぎ取り、自分もそれを脱いで、お互い一糸纏わぬ姿になっていた


結婚式を無事終えたという安堵感と、お酒に酔っていたのもあってか、私はいつも以上に大胆になって健次と抱き合った
健次もそんな私を楽しんでいるようだった
ひとしきり抱き合って、お互い見つめ合い軽くキスをした


「今日は随分大胆だったね?奥さん」
「だって、そうしたかったから」
「またお願いできる?」
「嫌」
「そう言うと思った」


ふふっと笑いながら私の額にキスを落とした


「奈南美」
「ん?」
「愛してるよ」


突然の健次の言葉に思わず見上げたら、優しい笑顔があった


「これからもずっと愛し続けるから、よろしくね。奥さん」


私が嬉しくて泣いていると泣き虫だなぁと言いながら優しく頭を撫でてくれた


「私、可愛げがないけどいいの?」
「そういうとこ、可愛いと思うけど?」
「本当に?」
「うん。で、返事は?」
「私も、ずっとあなたを愛し続けます」
「はい、よくできました」


健次は深いキスをしながら、また私の体に覆い被さってきた


「まだするの?」
「当然。だって、結婚初夜だよ?」
「ねえ、旅行中も?」
「当たり前。だって新婚旅行だよ?この分じゃ、奈南美はすぐに会社辞めることになるかもね」
「ええ?」
「大丈夫。ちゃんと養うから。心配しないで」
「うん……」


そうしてまた私は健次に快感の渦へと連れて行かれた



私達は今、スタートラインに立ったばかり
これからも、いろんなことがあるだろうけど、このこの人と一緒だったら、何もかも乗り越えて行ける
だから私は、ずっとこの人から離れない
可愛げのないこの私を愛し続けてくれるのは爽やかな夫だけだろうから
< 86 / 93 >

この作品をシェア

pagetop