今日から家族になりまして。
「陽菜?」
後ろから、聞き覚えのある声がした。
雨が降りしきる中、その声だけは聞き逃さなかった。
「…………え。」
私は、ゆっくりと後ろを振り返る。
するとそこには、キョトンとした顔の空が立っていた。
「あ……」
私は空の顔を見た瞬間、ものすごく不安だった気持ちが吹っ飛んで、安心へと変わっていった。
「どーしたんだよ!?外に出て大丈夫なのか!?こんなに濡れて……」
空が私の方へと駆け寄ってきた。
その時。
私は、思わず空の体に思いっきり飛び込んでしまった。
細めの腰に腕を回し、いっぱいいっぱいに力を込める。
空の胸に顔を埋めて、私はずっと抑えていた涙を流した。
「…………ど……こ、行ってたのよ……!
途中で、電話切れちゃうし……雷……すごいの鳴ってたし……
なんかあったのかもって、思ったじゃんか……!
わざわざ遠回りして帰ってくるはずないって思って……
普通にスーパーまでの道を辿って探してたのに、いないし……
見つかんなくて……すごい……不安だったんだから……」
私が泣きじゃくりながら言うと、空が優しく私の肩に手をまわすのがわかった。
「…………陽菜。ごめん、心配かけて。でも俺…………コンビニにアイス買いに行ってただけなんだけどな」
空の言葉に、私はバッと顔を上げて、空の顔を見た。
「えっ?なんでっ!?」
「いや、スーパーに陽菜の好きそうなチョコのアイスなくてさ。
近くのコンビニに買いに行ってたんだよ。
電話も、ちょうどアイスをコンビニに買いに行こうとしてたことを忘れそうになってて、
思い出した瞬間に、電波が悪かったみたいで切れちゃって……」
軽く笑って言う空の胸に、私は一発頭突きを食らわす。
「そんなのどうでもいいよ!!
こんな嵐みたいな天候の中、わざわざアイスのためだけにそんなことしなくていいよ……!
事故にでもあったらどーすんの……
あんたになんかあったら私、嫌なのに……」
「………………そんな、大げさだって……」
「大げさじゃない!!
私はあんたのこと……
もうとっくに
家族だって思ってるんだから……!」
空の顔をしっかりと見て、私は言った。
空は、なんだかすごく驚いているようで、戸惑っているような感じがした。
少し顔が赤くなってて、目をパチパチと何回も瞬きさせる。
するとそのあと、空がすごく嬉しそうに、
今までに見せたことのないような優しく、
子供みたいに歯を出してくしゃっとした笑みを私に見せたので、
ずっと止まらなかった涙が、一瞬にして止まってしまった。