結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「社長とのデートですよ! 今度は正真正銘、ふたりで食事に行くんでしょう?」


私の脳は一瞬であの夜の場面に切り替わり、ドキリと心臓が動いた。


 * * *


社長に歓喜のハグをお見舞いされたあと、私たちも帰るべくタクシーに乗り込んだ。社長の車は、信頼している運転手さんに代行を頼んだらしい。

心身ともにふわふわした状態で、夜空にそびえるホテル群の綺麗な明かりを車窓から眺めていると、私の耳にこんな言葉が飛び込んできた。


「今日の礼とご褒美に、改めて食事をしに連れていってやる。今度はちゃんと、ふたりで」


驚いて隣を見やれば、窓枠に肘をつく彼が優しく微笑んでいる。ようやくリラックスしつつあった心が、再び緊張し始める。

今度こそ、本当にふたりの時間を過ごせるの?


「今日の目的が接待だってわかったときのお前、結構悲しそうにしてたように見えたから」


そう言われて、少しギクリとした。

確かに、甘いお誘いではなかったことに多少ショックは受けた。でも、最初から怪しいと勘ぐっていたし、そんなに悲しい顔はしていなかった……と思いたい。

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