結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「……きっと気のせいですよ」


無愛想に返したものの、まったく意に介していない社長は意地悪な笑みを浮かべる。


「そんなに俺とデートしたかったとはね。悪かったよ」

「気のせいですって!」


恥ずかしくてムキになってしまうのは、きっと彼の言うことが全部間違っているわけではないから。

デートであれ接待であれ、社長とふたりで出かけられることを楽しみにしていた気持ちは本物だった。恋愛感情とかじゃなく、好奇心からくるものだったけれど。

だから今も、また誘ってもらえて嬉しいことは事実だ。

ほんのり火照る頬を見られないよう、窓のほうにそっぽを向いたものの、蜂蜜みたいな声が私に絡みついてくる。


「今日の分もたっぷりかまってやるから。甘やかされるつもりで、気楽に来いよ」


声と同じくらい糖度高めな微笑みを向けているであろうことは明白で、あっさりほだされそうになってしまったのは言うまでもない。


 * * *

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