結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
画面から彼女へ目線を移し、気が抜けた声で挨拶する。


「あ……さっこちゃん、おはよ」

「どうしたんですか? いつもキビキビしてる綺代さんが、今日は燃え尽きたみたいになっちゃってますけど」

「んー、ちょっとね」


白衣のポケットにペンを差しながら不思議そうにする咲子ちゃんに、私は苦笑いを返した。

昨日のお見合いが上手くいかなかったことより、自分の恋愛スキルレベルの低さに落ち込んでいるのよ。

これまで彼氏がひとりもできたことがない原因は、研究に没頭していたせいだと思っていた。

二十七歳になり、周りで結婚ラッシュが始まったことでようやく危機感を覚え、結婚相談所に入会してみたわけだけれど、私自身に問題があるのだとはっきり思い知らされたわ。

すると、さらりとした黒髪のもうひとりの研究員が、左側から私の顔を覗き込んでくる。


「潤いが足りない肌に生気のない瞳……。また失敗したんですね、お見合い」


眼鏡の奥の切れ長の瞳で私を観察し、ズバリ当ててくるこのクールなイケメンは、ザ・理系男子の氷室(ひむろ)くん。

彼は二歳下でありながら、とても優秀だと課長に買われているホープだ。ただ、女心はまったく理解できていない。

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