結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
アピールされたことより、すでにそんなふうに呼ぶようになったことに軽く引きつつ、から揚げにレモンを絞る私。

隣りに座る紫乃ねえは、缶ビールのプルタブをぷしゅっと開けて言う。


「最近あんたの周りにイケメン出現率高くない? 一匹くらい捕獲しなさいよ」

「巷で流行りのゲームみたいに言わない」


すかさずつっこんだものの、なぜかお母さんも便乗する。


「丈くんはレアよ! あんなに綺代のこと気に入ってくれる子、きっとなかなかいないから」


なに気に失礼な母を据わった目で睨むと、紫乃ねえが目を丸くして私のほうに身を乗り出してくる。


「えっ、気に入ってくれてるの? ならなにも迷うことないじゃない! 処女卒業おめでとー」

「紫乃! もうちょっとやんわり言いなさい、やんわりと」


ツッコミどころ満載で言いたい放題のふたりに呆れながら、私は素知らぬ顔でから揚げを頬張った。そして、ぼんやりと考えを巡らせる。

彼女たちの言う通り、葛城さんは容姿も整っていて、パティシエとしての確固たる地位を築き上げている超優良物件だ。

そんな人が私に好意を寄せてくれることなんて、もう二度とないと重々承知している。私が手を取りさえすれば、きっと明るい未来が待っているはず。

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