結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
ドキッと動揺したのがバレないよう、「嘘じゃないですから」と手を振ってごまかす。

気だるげに片手で頬杖をつく彼は美しい笑みを浮かべていて、私の心の内を見透かしているようなそれが恐ろしかった。


私と社長の関係は、どんどんおかしなことになっている。恋人ではないのにキスをしたり、他の男性との付き合いを制限されたり。

それを嫌だと思わず、むしろ若干嬉しく感じてしまっている私もどうかしている。付き合ってほしいと言ってくれている葛城さんにすら、こんな気持ちにならないのに。

この謎の心情を理論的に説明したいけれど、それはとても困難な気がする。

そこまで黙考して、最後の入力を終えてエンターキーをトンッと押したとき、ひとつの答えがふと思い浮かんだ。頭の中を駆け巡るのは、以前社長が放ったひとこと。


『本能に正直になれ』


……そうか。なぜ社長は特別なのか、その答えは簡単に導き出せたのに、私が難しく考えていただけだったんだ。

さっき、彼の元カノらしき人のことを聞いて胸がざわついたり、彼の腕の中が心地良かったり、そう感じたことがすべてを物語っているじゃない。

よく言われる“恋愛は理屈じゃない”という文句の意味を、今初めて理解できた。

私の本能が求めているのは、おそらく──今隣にいる、過保護な狼なのだ。




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