結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
お見合い初体験のあのときは、あまり着飾りすぎるのも良くないと思い、レディーススーツに普段通りの眼鏡をかけ、肩下十センチほどの黒髪もひとつにきっちりまとめた姿で挑んだ。

すると、相手の男性は、『なんだか僕、面接官をしているような気分になってきました……』と、微妙な笑顔で呟いていたのだ。

そのときはどういう意味なのかまったくわからなかったものの、終わったあとに恋愛経験豊富な姉に報告し、爆笑されてようやく理解した。

私は就活生にしか見えなかったであろうことを。

反省点はそれだけじゃない。

高級チョコレートメーカー「サンセリール」で研究員として働いている私は、いつも白衣を着て試験管を振っているような女。

商品開発のための研究をしたり、成分を調べたりすることはできても、愛想良く楽しい会話をするスキルは残念ながら持ち併せていない。

学生時代から男子が多い学科に属していたから、男性と接することに慣れていないわけではないけれど、初対面の人と改まって話すとなるとやはりダメだった。

緊張するとどうしても固くなって、相手が興味ないような専門的な話ばかりしてしまい、お見合いじゃなく擬似面接になってしまったというわけだ。

当然断られてしまって今日に至るのだけれど、今回はその反省を生かしているから大丈夫、と思いたい。

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