結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「今は、彼女と話す機会すら与えてもらえませんがね」
自嘲して苦笑を漏らし、再びパソコンに手を伸ばした。頭の中では、綺代の切なげな声が巡る。
『達樹さんの大切な人になれたみたいで……幸せでした』
観覧車の中で言われたあの言葉が、引っかかって仕方ない。嫌われてしまったのならそれまでだが、どうもそうではない気がする。
だったらなぜ、あそこまで逃げ回るのだろうか。
ずっと考えている疑問を今も渦巻かせ、経営管理システムにアクセスしようとしたとき、斜め後ろで黙ったまま立っていた綾瀬が突然頭を下げた。
「申し訳ありません」
急に謝られて、俺は怪訝な顔でそちらに身体を向ける。
平静な表情をしているものの、どこか暗い影が落ちているように見える彼女は、意を決したように口を開いた。
「私が倉橋さんに言ったんです。『社長は、あなたを通して別の人を見ている』と。そのせいで、彼女は身を引こうとしているのかもしれません」
思いもしなかった事実を告げられ、俺は唖然とする。
俺が別の人、つまり綺代以外の女性を見ているだなんてありえない。なぜそんな嘘をついたのだろうか。