結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
でも、気後れするようなところよりも、知る人ぞ知るお店に連れてきてもらえたほうが、私としては嬉しいし、彼のセンスの良さも感じる。

とはいえ、店内にずらりと並ぶ眼鏡たちはとてもオシャレで、お値段も私には手が出せないものばかり。


「どれでも好きなものを選んでくださいね」


社長は笑顔でそんなふうに言うけれど、気が引けないわけがなく、私は曖昧に頷いた。

お言葉に甘えようとは思ったものの、本当にいいのかな……。まぁ、社長なら数万円の眼鏡ひとつ買うくらい容易いことか。

悩みながらしばらくディスプレイを眺めていると、社長がなにやら眼鏡を弄っていることに気づく。なんとなくその姿を見た私は、思わず二度見した。

彼の小さなお顔に、黒いスクエアフレームの眼鏡がかけられている!

矯正は必要ない彼が眼鏡をかけている姿なんて、きっと二度とお目にかかれない。目を輝かせてまじまじと見つめる私に気づいた社長は、少しお茶目に笑ってみせる。


「一度かけてみたかったんです。知的に見えますか?」


自然に中指でくいっとブリッジを持ち上げる仕草にもキュンキュンしながら、私は何度も頷く。

< 59 / 276 >

この作品をシェア

pagetop