結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
前を見据え片手でハンドルを握る、カッコいいとしか形容できない社長に問いかけられ、胸がときめくのを感じながら平静なふりをして答える。


「特にこだわりはないんです。これもチェーン店で買ったセール品ですし」

「そうですか。じゃあ、私が気になった店があるので行ってみませんか」


おぉ……相手が気になったところに連れて行ってくれるとか、なんかデートっぽい!

これだけのことで軽く浮かれつつ、「はい、ぜひ!」と即答すると、社長はこちらにちらりと目線を向けて微笑んだ。

弁償してくれることへの申し訳なさはまだあるけれど、こうなったらお言葉に甘えてしまおう。



社長が連れてきてくれたのは、横浜駅近くの路地を入ったところにある、隠れ家的な眼鏡屋だった。

店名が書かれた木の看板に灰色の外壁、中はオレンジの明かりが灯っていて、シックで落ち着いた雰囲気がするセレクトショップだ。

社長が商談をしに行く際、たまたま近道でここを通って見つけたが、視力が良いため入ったことはないのだという。

眼鏡に触れるのもためらわれるような高級感たっぷりのお店に連れて行かれるのでは……と若干身構えていたから、なんだか意外だ。

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