結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
私が来たことに気づいてタブレットをバッグにしまう彼に、ぺこりと頭を下げる。


「お待たせしてすみません。ありがとうございます」

「いいえ。仕上がりはどのくらいになりそうですか?」

「四十分くらいだそうです」


今からだと四時半頃には出来上がりそうだ。腕時計に目を落とした社長は、「そうか」と呟き、目の前に立つ私を見上げて動きを止める。

……ん? なんだろう、この品定めされているような視線は。

私を見つめてなにか思案しているらしい彼を不思議に思い、わずかに首をかしげると、彼は突然すっと腰を上げた。

そして、なぜか店の奥に向かい、そこにいる店長さんに声をかける。


「すみません、少し外へ出てきます」


えっ、外へ? 急にどうしたのだろう。

店長さんが快く「どうぞ~」と了承すると、彼はキョトンとする私の手を引いて、眼鏡屋をあとにした。

夕暮れの匂いがする街を歩き始める彼に、私は戸惑いながらついていく。掴まれたままの手首から、全身に熱が広がっている。


「あ、あの、どこへ行くんですか?」

「近くに雑貨屋があったので、そこへ」


端的な彼の答え通り、眼鏡屋から三分もしない場所にレトロで可愛らしい雑貨屋があった。

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