結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
「突然のお話で驚かれましたよね。でも大丈夫ですよ、私がきちんと教えて差し上げますから」

「ありがとうございます! よろしくお願いします」


その言葉が心強く、私は表情を明るくして頭を下げた。

綾瀬さんって、すごくいい人なんだな……。“才色兼備な社長秘書”というイメージが強くて気後れしてしまい、なんとなく近寄りがたく思っていたから、一気に安心した。


挨拶が済んだところで、さっそく予約してある個室へと案内してもらう。

シックなバーカウンターの前を通り、式場のように厳かな雰囲気が漂うメインダイニングを横目に廊下を歩いていくと、奥まったところに個室があった。

入ってすぐ目に飛び込んできたのは、開放感がある大きな窓から見える庭園。幻想的にライトアップされていて、遠くにランドマークタワーも見える。

デザイン性が高い照明に柔らかな明かりで照らされた、白いテーブルクロスがかけられた円卓が映えており、高級感がありつつも落ち着いた空間になっている。

しかし、感嘆の声を漏らすのは私だけで、上座の位置を確認した社長は、「料理や会計の確認をしてきます」と言って、すぐに部屋を出ていった。

残された私は、同じく社長を見送る綾瀬さんに、距離を縮めるためにも話しかけてみる。


「お恥ずかしい話なんですが、私マナーとか全然わからなくて……。教えてもらえるとすごく助かります。ありがとうございます」

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