結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
腕を組んでうっとりした表情を見せる葛城さんと、共感しすぎて頷きまくる私。

こんなに話が合う人は久しぶりだ。学生時代に戻ったみたいで楽しい!

盛り上がる私たちの間で、社長は穏やかな表情で静かに相づちを打っている。でも内心は、“なんの話をしてるんだこいつら”と、絶対呆れているに違いない。

キリ良く話が途切れたところで、社長は「そろそろいいお時間になりましたね」と、さりげなく会を終わりへと導く。

葛城さんは腕時計に目線を落とし、意外そうに目を丸くした。


「もう八時か。接待でこんなに楽しい時間を過ごせるとは思いませんでした」


正直な彼だから、これも本心のはず。ひとまずおもてなしは成功したようで、ちらりと目配せした私と社長は、自然と口元が緩んでいた。

ほくほくした気分で、お見送りするためにそろってレストランの外に出る。手土産を持った葛城さんは、タクシーに乗る前、私たちに向き直ってこう言った。


「あなた方は、とても面白いですね。有能な研究員さんもいるようですし。これからも、有意義な時間を過ごさせてください」


初めて見せてくれた柔らかな笑みと、今後もお付き合いをしてくれることを匂わせる言葉をもらえて、さらに喜びが広がる。

飛び跳ねたい衝動を堪え、「こちらこそ、よろしくお願いいたします」と、社長と一緒に心を込めて頭を下げた。

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