彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
外が段々と白んできてもうすぐ夜明けが近いことを知らせる。


「外は寒いですから温かくしてから出てください」


そう言われて、ずっと膝にかけたままだった主任のダウンを慌てて手渡す。


「あの。これ、ありがとうございました」


自分の温もりが残ったままのダウンを手渡すのは少し恥ずかしい気もしたけど、それを着ないといくら主任だって寒いはず。

ケープを着る時にそのままフードをかぶってしまった私を見て主任が「雪ん子みたいですね」って言って笑った。


「家でも母にエスキモーの子供みたいって言われました……」

「ハハハ そっちのほうがかわいいですね」


いやいやいやいや
エスキモーの子供も雪ん子もどっちも子供でしょう?
だって、それって、ようするに


「子供っぽいってこと、ですよね、ソレ」

「いえ、かわいらしいってことです」


主任は大真面目な顔をして言ってくれたけど、子供っぽくて可愛いってことには違いない。

いくら温かくしてくるようにって言われても、もっと大人っぽい服装してくるんだった。
まぁ私が大人っぽい服装をしてもたかが知れてるけど。


車を降りて主任と一緒に砂浜の方へ向かっていく。
日の出まであと少し。
すでに砂浜には沢山の人が集まっていた。


「そろそろ見えますよ」


そこにいる人たちが全員海の方を見ている。
今年初めて見せる太陽の光を浴びたら何かいいことありそう、だよね?


少しずつ明るくなってくると周りから「うわー」とか「おー」とか歓声が上がる。

しかも、拝んでる人までいる。

毎日朝になればこうやって昇ってくる太陽なのに、今日だけはみんなこぞって見ようとする不思議。
だけど、新年最初のこのあたたかな光から何かパワーがもらえるような気がするから……


『彼ともっと距離が縮まりますように』


私も心の中でその光にお願い事をした。
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