彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
主任は座席を戻して、すでに冷えてしまった缶コーヒーに手を伸ばしながら、
「シートベルト、はずしてもいいですよ?」
さっき寝返りをうとうとして、これに気がついて起きたんだった。
「そうですよね」
シートベルトを外そうとするけど、寝起きだから力が入らない。
ここ押すだけで外せるのに、なんとも情けない。
「大丈夫ですか?」
あたふたしている私に気づいた主任の手がそっと伸びてきて、カチャリと音を立ててベルトが外された。
「す、すみません。なんか力が入らなくて……」
主任は少しだけ微笑むと、コーヒーを一口飲んだ。
う、気まずい
なんていうかこの沈黙
こういう時ってどうすればいいんだっけ
早く夜が明けて欲しいような
このままいたい様な
いやこのままとか心臓が持たないから無理だけど
でも
海に沈む夕焼けの話から、初日の出を見に来る話になってこうして今ここに居る訳だけど
その提案をしてくれた朔也さんは、今はここに居なくて主任と二人っきりで
二人っきり……なんだよね、今。
なんか気の利いた言葉の一つも言えればこの状況を打破することが出来るんだろうけど、あいかわらず私の頭の中でそんな言葉が思い浮かぶことはなくて。
こうしている間にも沈黙のまま時間が流れていく。
隣を見れば、ただまっすぐと前を見ている主任。
外は暗くて太陽が昇ってくる様子はない。むしろ月さえ見えているはず。
主任は今、何を考えてるのかな?
その瞳に映る暗い海を見ながら何を思っているのかな?
「どうか、しましたか?」
あ、私ったら
また無意識に
しかもこんな至近距離で見ていたら誰だって気づくし気になるよね
「あ、いえ、主任の目には何が見えてるのかなぁって」
つい、思ったことをそのまま言ってしまって、一瞬不思議そうな顔をした主任に慌てて言い直す。
「あ、あの暗いですし、何も見えませんよね……」
「夜が、」
夜?
主任が暗い海を見つめたまま何か言いかけたあと。
「いえ。もうすぐ夜が明けます」
夜があける。
そう言う前に一度目を伏せてから言い直した主任。
その横顔を見ていた私が思ったのは
『夜が、明けなきゃいいのに』
そんな言葉だった。
「シートベルト、はずしてもいいですよ?」
さっき寝返りをうとうとして、これに気がついて起きたんだった。
「そうですよね」
シートベルトを外そうとするけど、寝起きだから力が入らない。
ここ押すだけで外せるのに、なんとも情けない。
「大丈夫ですか?」
あたふたしている私に気づいた主任の手がそっと伸びてきて、カチャリと音を立ててベルトが外された。
「す、すみません。なんか力が入らなくて……」
主任は少しだけ微笑むと、コーヒーを一口飲んだ。
う、気まずい
なんていうかこの沈黙
こういう時ってどうすればいいんだっけ
早く夜が明けて欲しいような
このままいたい様な
いやこのままとか心臓が持たないから無理だけど
でも
海に沈む夕焼けの話から、初日の出を見に来る話になってこうして今ここに居る訳だけど
その提案をしてくれた朔也さんは、今はここに居なくて主任と二人っきりで
二人っきり……なんだよね、今。
なんか気の利いた言葉の一つも言えればこの状況を打破することが出来るんだろうけど、あいかわらず私の頭の中でそんな言葉が思い浮かぶことはなくて。
こうしている間にも沈黙のまま時間が流れていく。
隣を見れば、ただまっすぐと前を見ている主任。
外は暗くて太陽が昇ってくる様子はない。むしろ月さえ見えているはず。
主任は今、何を考えてるのかな?
その瞳に映る暗い海を見ながら何を思っているのかな?
「どうか、しましたか?」
あ、私ったら
また無意識に
しかもこんな至近距離で見ていたら誰だって気づくし気になるよね
「あ、いえ、主任の目には何が見えてるのかなぁって」
つい、思ったことをそのまま言ってしまって、一瞬不思議そうな顔をした主任に慌てて言い直す。
「あ、あの暗いですし、何も見えませんよね……」
「夜が、」
夜?
主任が暗い海を見つめたまま何か言いかけたあと。
「いえ。もうすぐ夜が明けます」
夜があける。
そう言う前に一度目を伏せてから言い直した主任。
その横顔を見ていた私が思ったのは
『夜が、明けなきゃいいのに』
そんな言葉だった。