彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
外灯の下、立ち止まった私たち。
主任の驚いた顔が段々と元に戻っていく。

私は握っていた紙袋を主任の前に両手で差し出す。


「どうしても今日渡したくて、すみません。主任疲れてるのにお呼びたてして」

「それは、どうしても見てもらいたいもの、ですか?」


え?
主任が今口にしたのは、望亜奈さんが私の携帯から主任に送ったメールの文章。

これがきっと最後のチャンス。

ここでそうだと言わなきゃ、このままバレンタインが終わっちゃう。

たから主任の顔を見て返事をした。


「……はい」


そんな私に主任から告げられた言葉は、


「残念です」


残念?
え?どういう、意味?


「ここではすぐに見ることが出来ません。確認は家に帰ってからでも?」


確認?何の?
え?
ていうか意味がわかんないんですけど?


「ありがとうございます」


主任はそう言って受け取ってくれた紙袋。


「風邪引くといけませんし、早く帰りましょう」


ありがとうって言ってくれたけど。
バレンタインのチョコだってわかっててそう言うってことは……


それ以上何の言葉もなく、いつのまにか我が家に到着。
いつも主任は家のドアの前まで送ってくれる。お酒なんて飲んでなくても。


「ありがとうございました。その、暗いので主任もお気をつけて」

「家に着いたら確認させていただきますので。それではおやすみなさい」


確認ってまた言った。
確認も何も、チョコだって。


今日は十四日で、渡すのがその日じゃなきゃいけないものなんてチョコ以外にない。

それなのに確認するの?


今日の主任はなんかちょっと変。

言いかけてやめたり、
今すぐ確認できないから残念って言ったり


だいたい、確認って何?
確認したら連絡をくれるっていう意味?

その意味がわからなくてただぼーっとリビングにたたずむ。

ここから主任の家までは歩いてたぶん五分ぐらい。
連絡、待ってみてもいいのかな?
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