彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
望亜奈さんと一緒に帰り、車を置いて待ち合わせ場所まで歩いてむかった。

そこに居たのは―――


「なんで潤にぃがいるのよ……」


思いっきり睨んで言ってみたけど、潤兄は全く聞いてない。
大体、望亜奈さんの彼の仲のいいお友達だって言うから……


「あれからスゲー仲良くなってさ。よく一緒に飲み行ってんだよ」

「うそばっか……」

「桃華ちゃん、それは本当に嘘じゃないんだよ」

「いいんですよ、そんなに合わせてくれなくても。潤兄がまた無理ばっか言って――」
「もう、いいからさ。メシ早く行こ」


相変わらず最後までしゃべらせてくれない上に人の話も全然聞いてません。
そこではたと気づいた。望亜奈さんが、一言もしゃべってない!
心配になって見れば、望亜奈さんは彼の横によりそってニコニコとその様子を見ている。

だ、誰ですか?この人は?!
て、突っ込みを入れたくなるぐらいの変りっぷり。
ネコ、何匹かぶってます?


「望亜奈さん?知ってたんですよね?」


「ん?」ってかわいく小首をかしげてこちらを見たけど、何のこと?って言いたそうな顔で。
あぁだめだ。これ。
二週間ぶりに彼に会えたのがすごく嬉しいみたいで全然聞いてない。
そんなに嬉しいなら、二人っきりで会えばよかったのに。

潤兄が捕まえたタクシーに四人で乗る。
乗った時にはすでに場所を運転手に伝えていて無言で目的地に向かっている。
潤兄は助手席で。私は後部座席でいちゃいちゃする望亜奈さんを見ないようにして外を見ていた。
どこ、むかってるんだろ?
タクシーに乗るって事は街中じゃないって事だよね?

あれ?この道は……

ウインカーを出して止まった場所は、朔也さんのレストランの前。

このお店は…
想い出が多すぎて
そこに足を踏み入れるのさえ怖い。
きっと入ってしまったら胸を締め付けるほどの痛みを感じるだろうから。


「……ここ?」

「ん。春のメニューになったらしいから」


四月だし、そうなんだろうけど。
なんで、どうして、
今日ここに来なきゃいけなかったんだろう

潤兄は何も知らないだろうから、そんなこと言えない。


「…桃、ちゃん。大丈夫?」


近寄ってきて望亜奈さんは聞いてくれたけど、多分私の顔色が悪くなってるんだろう。


「大丈夫、です」


みんなに心配掛けちゃいけない。
子供じゃないんだし。

私は少し遅れてみんなの後についていった。
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