彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
「これ二人分」と言ってお金を置いて立ち上がる主任。


「モモ、急がないと電車の時間」

「はいっ?!」


主任に言われて条件反射で立ち上がり返事をする。


「スー、またな」

「おぅ、今度はゆっくりな」


主任はみんなに挨拶してるし、少しぐらい余裕はあるようなら、


「あの、今日は楽しかったです。ありがとうございました」


きちんと挨拶はして帰らないとね。


「モモちゃん、またね」


笑顔でそう言ってくれたスーラさんに主任は、


「ダメ。もう会わせない」

「……」


何故かダメ。らしい。
スーラさんの隣でキューブさんはニヤニヤしてるし。


「やっぱジュンちゃん鬼だわ。もういいから早く行かないと時間じゃない?」


時計を見てそう言ってくれた雪姫さん。
そうだ、終電だから乗り遅れたら大変。


「じゃ、おつかれ」

「おつかれさま~」

「失礼します」


ペコリと頭を下げて主任の後ろから付いていく。
そのままみんなに見送られてお店を出た。



お店を出るときに入口の時計を見たらまだ時間に余裕はあったみたい。
だけど時計を確認してくれたはずの雪姫さんは、時間って言ってたよね?
そんなことを考えていたら主任はちょっと先のエレベーターの前で待っていた。
慌てて駆け寄って「すみません」と言うと、


「迷子になりたいんですか?」


あれ?
さっきまでの砕けた口調はどこへやら。
普通に今までの主任の話し方に戻ってた。

そんな変化に
どうしてもまた距離を感じてしまう。


「いえ、」


すぐにきたエレベーターに主任に続いて乗る。
営業に同行していたころはよくあったこと。
だけど、今は……

入口近くに立った主任は扉のほうを向いたまま。
その距離が今の私たちの心の距離をあらわしているようで

こんなに近くにいるのに
やっぱり遠い。


ポーーン


一階について振り返った主任。
そして……
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