彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
本当の彼に会える日

主任がジュンさんで ジュンさんは主任で…… わかったのはそれだけで だから私の頭の中は混乱したまま

終電に乗る私の隣にはなぜか主任。
「もう主任じゃない」そう言われたけど、目の前にいる人は紛れもなく主任で。
だからそれ以外の呼び方なんて……

なぜか主任から渡されたチケットは私がさっきキャンセルしたものと同じ電車。
送るって言ったってこれは終電で、歩いて五分の近所に住んでいた頃と違ってどうやって帰るの?
それに今日、主任はどこに泊まるの?
疑問はどんどん増えるばかり。

そして何よりも一番今気になっていること。

それは――――

この手をどうにかしてもらえないのか?



オフ会のお店があったビルから通りに出ると、GWのせいか街には人が溢れていた。
人がたくさんいるということは、今までの経験上……


「時間がないんですから迷子になられたら困ります」


そう言って目の前に出された手。
いつもの迷子防止だけのための手をつなぐという行為。
あいかわらずの保護者的な発言と態度に気分はどんどん暗くなる。
そんな私に主任はちょっと乱暴に手をとり繋いでしまった。

繋がれた手のその体温にいやでも主任を感じてしまって、悲しいのか嬉しいのかよくわからなくなる。


――――その時から手は繋がれたまま。


改札を通る時に離された手にほっとしたのもつかの間。
すぐに手を取られまた繋がれた。

もうここでは迷子にはなりませんよ?


「モモ、明日は?」

「へ?明日、ですか?えっと、特に何も……」


その呼び方にも困惑する。
えっと?
聞いておいてそのあとの答えはなしですか?

ここまでの間に主任が話をしたのは私が予約した電車のチケットをキャンセルすることだけ。
そろそろどういうことなのか話してくれてもいいと思う。
だって私には聞く権利ぐらいはあるはず。

そして……

この繋がれた手をなぜ離してくれないのか?
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