彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
私は主任と一緒に雲に乗ってふわふわと移動している


「もうすぐ着きますよ?」


隣から主任に優しく呼びかけられる。
そっか、もうすぐ着くんだ。

って、どこに?

だんだんと意識が現実に引き戻される。

そっか、私電車の中で寝て……

見ていたのは夢で、だいたい雲に乗るとか主任が隣にいるとかありえない。

はっ
電車の中?

あぁそっか、オフ会に行った帰りの電車の…

って、え?!

繋がれたままの右手。
頭の中でフルスピードで記憶をたどって、恐る恐る右側を見れば、


「起きましたか?」


って、主任が…

うわ。そうだ。
主任にほぼ拉致される形で電車にのって帰っている途中だった。


うわー
うわー
うわー


なんでまた、私は寝ちゃったんだろう?
なんで主任と一緒にいると、緊張しているはずなのに寝ちゃうんだろう?


「寒くなかったですか?」

「え、あ、はい。大丈夫、です……」


主任に質問されたら、とりあえず答えたけど条件反射で答えただけ。
寒くなかったかと言われれば、少し肌寒いような気もする。
でも主任とぴったりとついていた右側だけは暖かかった。


「ほら、もう着きますよ?」

「は、い」


地元の駅にあと少しでつくというアナウンスが車内には流れてる。
どうやら私は二時間も寝てしまっていたらしい。
ふと、カーディガンを持ってきていたことを思い出した。
でもそれを着るためには、繋がれたこの手を離さなければいけない……


「どうしました?」


私のそわそわとした様子に気づいた主任が問いかけてきた。


「あ、あのカーディガンを……」


そう言った瞬間すぐに放された手。

ずっと放して欲しかったはずだったのにやっぱりその瞬間は寂しく思ってしまう。
ごそごそとカバンの中からカーディガンを出してそれを羽織る。
ついでにカバンの中の携帯をちらっと盗み見ていると隣から主任が、


「雪さんにメールしておいてください。無事ついたこと」

「あ、そうですね」


とは言ったものの、もう十二時過ぎてるけど大丈夫かな?
どうしようか少し迷っていると、


「たぶん、心配していると思うので」

「あ、はい」


確かに帰る時も気をつけてねって何度も言ってくれたしね。
やっぱり主任は色々と考えてるなぁ。

駅に着いたことを雪姫さんにメールをすると私はカバンの中に携帯をしまった。
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