彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
新店に着いたら、何故かすごい人で。

挨拶もそこそこに接客カウンターに入るように言われた。

事務所に併設している店舗でもヘルプにはよく入るから特に困るようなことはないんだけど、

ていうか、こういうことなら制服着てきたのにっていう。



で、結果ラストまで接客。

どうやら新店キャンペーンで客の入りがかなり良かったらしくて、慣れない新しいスタッフさんだけではうまく捌けない。

そこで私に白羽の矢が立ったってことだったらしい。

だからね、そうならそうと……


ルート的におかしいと思われた理由はここにあって。

きっとランチもその前のえさって言うかそんな感じだったんだと思う。


主任の隣にずっといるよりは接客の方がいい。慣れてる分こっちの方が楽なんて思ってしまう私は間違ってますか?


「おつかれさまー」

「ほんとお二人が来てくれて助かりました」


この店舗の店長さんは女の人。

最初に挨拶したけど、綺麗だけどやわらかい印象の素敵な人。


「せっかくだし、これからみんなで飲み行っちゃう?」

「皆さんお疲れでしょうし、こちらも車ですから、それはまたの機会に」


それをやんわりと断る主任。

うん、なるべく早く帰って昨日の続き(もちろんゲーム)したい。


「あら、残念。じゃあ今度は予定を決めてからということで」


なーんだ。
この店長さん。主任狙いなんだ?

だって目の奥に本気がチラリと見えたもん。

ふぅーん。
望亜奈さんだけじゃなくて、他店舗でも人気だったりするんだ。


「では、今日はこれで失礼します」

「天ヶ瀬さんも、ありがとうございました」

「いえ、あの、では失礼します」


天ヶ瀬さん“も”ですか。


「すっかり遅くなりましたが、大丈夫ですか?」

「あ、はい」


車に向かいながら主任が話しかけてきたけど、やっぱり会話は続かなくて。

仕事なんだし、大丈夫じゃないとはいえないでしょ。

ていうか、それってする前に聞く言葉じゃないの、かな?

さすがにお腹空いたけど、昨日も遅かったし早く帰りたい。


「ここからなら30分で着くと思いますから」

「あ、はい。すみません」


あ、また謝っちゃった。
なんだろ、この緊張感。

いつも正面にいる主任が思ったよりも近い距離で隣にいるこの密室空間。

車の運転も丁寧で、真剣な横顔は……


ドキッ


あれ?
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