彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)
主任に後ろから抱き締められ、右肩に強く感じる主任のぬくもり。


「……もう、ムリ」


甘く響くその声はほんとに辛そうで、どこが具合が悪くなったのかと心配になる。


「え、…あの、?」

「モモがいないとか、ムリ」


ももが、いないとか、むり?

今ここに、主任のすぐ前に、います、けど?
そういうことじゃ、ないってこと?


「しゅに、…ん…?」


主任が口を開くたびに、吐息が耳にかかる。
なんでそんなに切ない声で……


「……モモ不足。手を繋ぐだけじゃ足りない。」

「あの、?」


もう一度強く、後ろから主任にぎゅって抱きしめられ、固まる。

ももぶそく?
ももがたりない?

だってそれって、まるで……?


「あとでゆっくりなんて言ったけど、もうムリだから、」


今度はムリ?
ドキドキと早まる心臓に、主任の言っている言葉の半分も理解できそうにない。


「モモのこと、忘れるなんてムリだった。……仕事が忙しければ消えてくれるかと思ったけど、逆だった」


……私と、同じ?

どんなに忙しくても
いつだって思い出すのは主任のその姿。


「モモが足らなくて、もう限界。」


私だってもう限界です。
このままでいたら確実に心臓壊れます。


「モモ、好きだよ…」


……主任が?

私を?

――――――す き ?


「モモ、返事は?」

「はいっ?!」


私の聞き間違い?
耳までおかしくなった?


「目を見て言わないとわかりませんか?……正直、今正面向くとかなり危険ですけど」


危険ですよ、危険。
面と向かってそんなこと言われたら、たぶん間違いなく……


「モモじゃなきゃダメです。モモしかいりません。だから、もっとモモのこと心配させてください」


私だって主任じゃなきゃ。
だって、ずっと……


「ずっと主任の近くにいられたらって、でもそう思い始めたらどんどん欲張りになって、今日だって……」


このままでいたいだなんて思ってる。
そしたらずっと一緒にいられるのにって。


「もっと欲張ればイイんです、モモの言うことなら何でも叶えてあげますよ」


主任がそう言ったら、ほんとになんでも叶えてくれそうで。
でも、叶えて欲しいことなんて一つしかない。

主任の隣に居させてください。
――――ずっと。


辺りは暗く、聞こえるのは波の音。
そして主任の甘く切ない吐息と、あたたかい主任の腕の中で幸せをかみしめた。
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