彼と恋のレベル上げ(10/6おまけ追加)

 

自分の気持ちに気づいてしまってからというもの。

会いたい気持ちはあるけど、なんとなくログインするのがためらわれて。

実は二日ゲームしてない。

仕事は忙しくないから帰っても暇で。
暇だけど、ログインするのは……。

もうちょっと仕事増やしてくれないかなぁなんて主任を見てみたけど、眉間にシワよってる。

そっか、そろそろコーヒータイムだ。


ここ最近のお約束。定時過ぎのコーヒータイム。

私は席を立って給湯室に行き、コーヒーを淹れると主任のデスクにそっと置いた。


「主任、どうぞ」


その香りに気づいた主任が一瞬こちらを見て「いつもありがとう」と言ってくれた。

そのとき、口角がちょっとだけ上がった気がする。


主任にコーヒーを出すようになって気づいたわずかな変化。

笑うことないって思ってた主任も実はちゃんと微笑んだりするんだって。

いや、よーくみないと気づかないほどの角度だけど。

だからあの日、ちょっと微笑んでる?って思ったのは気のせいじゃなかったんだ。

だからきっと主任とも円滑な人間関係が築けるはず、と。


「あの、何かやることありますか?」

「いえ、急ぎのものは特にありません」


って言った主任のデスクに積んである書類の束は?

私がちらっとその束に視線を移したことに気付いた主任が慌てて


「別にこれは今日じゃなくてもいいんです。早く帰れるときぐらい帰ったらどうですか」

「でも……」


帰りたくないから仕事くださいとか言えるわけもない。
そんなこと気軽に言えるような上司でもない。


「あぁ、そういえば天ヶ瀬さん。六月の新機種が出る前にこの前いけなかった店舗同行してもらえますか?」


あ、そうか。
新機種出ちゃうと書類も増えるし、店舗の方のヘルプもきっと言われるだろうから。


「はい。わかりました」

「では、金曜日にお願いします」


金曜日か。また週末だな。
この前の感じだと、また遅くなるよね?


「それと……」

「はい?」

「その日は車じゃなくてバスか徒歩で会社に来て下さい」

「あー。はい。わかりました」


この前みたいにまた一旦家に車置いてとか、時間のロスになるもんね。


結局この日は仕事がもらえなくて、しぶしぶ帰宅したわけだけど。

のんびりお風呂に入ってもまだ十時で。

今日はちょっとだけログインしてみようかな?
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