キミは俺のモノでしょ
「それとも君が雅をそそのかしたのか?」

「……え……」

「そうなのか?」


そそのかすって?


「違う……うららは、なんにも悪くない」


か細い声で、雅が反論する。


「それじゃあ、やっぱりお前の仕業か」

「……そうだ。俺が、うららに、一方的に手を出した。だから、うららは、なんにも悪くない」


違う。

違うのに。


「なにを偉そうに。お前、来栖家の長男として恥ずかしくないのか?」

「……恥ずかしいのは、父さんでしょ?」

「なんだと?」

「仕事仕事って。ほんとに仕事してんの?」

「お前……」

「ほんとは自分が一番恥ずかしいことして、それでいて善人気取ってんじゃないの?」


「やめっ……」


雅につかみかかろうとする父の手を掴んだが、


「うるさいっ」


そういって、いとも簡単にはらわれた。


「っ、」


その衝撃でわたしは床に尻もちをつく。


その瞬間

雅の顔つきが変わったのがわかった。
< 415 / 438 >

この作品をシェア

pagetop