きっと世界は

聞こえる。

なんだろ。


鳥の鳴き声。でも、いつもの鳥の鳴き声じゃない。


土の匂い。この匂い、私知らないな。


「…い!……!おい!」

これは聞きなれた声。

「楓!!!起きろ!!」



うっすら目を開ける。

「景…?」

目の前に見なれた幼馴染の顔。
その顔は真っ青で、汗が滲んでいる。

「ここ!俺たちの知らない世界なんだよ!俺たち、全く知らないところにワープしちまったんだ!!」

「…知らない、世界」


起き上がり周りを見渡す。

鬱蒼とした森。
遠くには建物らしき影が見えるがはっきり見えない。
どちらにせよ、ここは知らない場所だ。

「…えっ?!」

「どうすんだよ…!人もいないし、帰れるのかよっ」

「そんな…まって、頭の整理が…」

そんな言葉の言いかけで、森の隙間から人影が見えた。

「ねえ、人が…」

「え?」

人影は近づいてくる。

1歩、2歩、3歩…


「…おいっ、あの人が持ってるの剣じゃないか?!」

「なっ…?!」

よく見ると右手には大きな剣らしきものを構えている。
そして見慣れない奇妙な洋服。

人影は近づく。



目が合った。






「お前…」

剣をもった男の低い声が森に響き渡る。

「…あの…」

何か答えなきゃ、そう思い言葉を繋げようとした時。


「きゃあっ…」

私達の目の前に剣が振り下ろされた。

突然のことで思考が停止する。

なに、これ。

わかんない。わかんない。なにこれ。

「見慣れない奴だな。貴様ら、何を目的にここへ侵入した」

「え…」

「お前らは何者だ!」

答えなきゃ。何か言わないと。でもなんて言えばいい?
そう考えていると景が口を開いた。

「俺らは侵入したつもりはないんです…!気づいたら、ここにいて…その…えっと…」

たどたどしくも、なんとか状況を説明しようとしている。

ーーーー私も何か言わなきゃ
そう思った時、私のすぐ右を1本の矢が勢いよく飛んでいった。

「なっ…何事…?!」

振り返ると、鎧をまとった複数の兵士たち。
そして、この兵士達も剣や弓といった武器を装備している。

「おい、なんなんだよ…」

景がゆっくりと立ち上がり後ずさりをする。
そして、景の位置と入れ替わるように先ほどの剣をもった男が前に出た。

「事情は後で聞く。下がれ」

男はそういうと、大きな剣を振り下ろした。











初めて見たたくさんの血。
これは夢?夢ならあと何分で覚める?

手の震えが止まらない。残虐な光景を見た。

「…なんで、こんなこと」
「?」

男は何もわかってないような顔をしてこちらを振り返る。なんで?

「なんでっ…こんなひどいこと…」
「…」
「おかしいよ…ねえ、なんでそんな普通の顔をしていられるの?!私にはわかんない!」

景も唖然とした表情で、男の顔を見つめている。

男は静かなため息をつくと口を開いた。



「…おまえ達は本当にこの国の人間ではないのだな」

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