ケーキ屋の彼
「ただいま」
明かりのつく家に帰ってきた柑菜。
「あれ、早かったじゃん」
エプロンをしてキッチンに立つ涼、そこからは香ばしいバターのようなにおいが漂ってくる。
じゅーっと何かが焼ける美味しそうな音が聞こえてきた。
それと同時に、柑菜のお腹もぐうっとなる。
柑菜は買ってきたチョコレートを机の上に置き、涼が作っているであろう料理を覗きに行った。
「鮭のムニエルだ」
「そう、スーパー行ったらたまたま安かったから」
「そっか……あ、ねえ、涼って明日暇?」
せっかくだし、櫻子のために明日の予定に涼も連れて行こうと考えた柑菜。
いつもなにかあると助けてくれる櫻子に、柑菜はなにか櫻子のためにしたいと前から考えていた。
「まあ、特にやることはないけど」
「じゃあ、明日涼もチョコレート展行かない? 涼も楽しめると思うよ」
2人に聞くのと並行して、涼を誘う。
2人からはすぐに『もちろんいいよ』と返事が来た。