ケーキ屋の彼

「どうなるんだろうね、あの3人」


「うん……」


側から見ると、3人は仲睦まじく部屋の中の装飾をしている。


3人の中で2人が幸せになれば、1人は心寂しい思いをしなければならないし、そもそももしかしたら誰もこの関係の中では動こうとはしないかもしれない。


みんな、相手のことを思ったり自分に自信がなかったり、それぞれが思いを伝えないでいる。


「私思うんだけど、渡辺くんにとって櫻子って忘れられない人みたいな感じじゃないかな……」


本人のことは、本人にしかわからない。


けれどもそれは、思いが強ければ強いほど人にも伝わってしまうもの。


「櫻子に他の好きな人がいることを知っているし……小さい頃の2人に何があったのかはわからないけど」


たしかに、亜紀に言われて柑菜が空の顔を見てみると、櫻子を見る彼の瞳は自分を見るときとはまったく違っていて、慈愛に満ちているようだった。


でも、2人には何もすることができず、ただ見ているだけしかできない……。
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